In Search of the Miraculous

やっとゆっくり観ることができたので感想を。


オランダ出身のコンセプチュアル・アーティスト、Bas Jan Aderの最後の「作品」から引用された本作のタイトル、In Search of the Miraculous。


その「作品」で、Bas Jan Aderは小さなボードで大西洋を横断しようとして、行方不明になり命を落とすことになる。


大西洋に向かってどんどん小さくなって行くボードが、最後に消失点となり、遠景の中で消えていくのと同じように、Bas Jan Aderはこの世からいなくなった。


「奇跡を求めて」行われた航海だが、そこでの奇跡は神秘主義的なものではなく、あくまでも物質的存在としての人間を完璧に表してしまった、というところにあるだろう。
机に立てた鉛筆が倒れるように、Bas Jan Aderは死んだのである。


Bas Jan Aderの作品は、そんな風になんのドラマも物語もなく、ただ「運動」する人間の姿を収めたものが多い。





Pontus Alvの新作も、亡くなった家族に捧げる言葉が挿入されたり、あるいはDIYという点で大資本に対する批判も伺えたりするのだが、やはりドラマツルギーを否定した、ただの、しかし超かっこいい映像作品、という捉え方で鑑賞するのが一番楽しめるだろう。
そしてスケートボーディングはそういう映像表現にはぴったりの方法論であるはずなのだから。


ベッドで寝たきりになっている祖父の横に座るPontus、やばいブラントトリックを魅せるEniz Fazliov、危険なダウンヒルを披露するモスクワのスケーター、線路沿いにDIYスポットを作り往復して延々トリックを繰り返すマルメのスケーター、回転を続ける風力発電所、テクニカルでスムーズな滑りのDanijel Stankovic、バンクでフレッシュなフリップトリックをするPontus、取り壊されnるDIYスポット、空に浮かぶ風船、、、
Pontusという一人の人間を通した、人生とスケートボーディングのドキュメンタリー的内容とも受け取れるが、全てはただの「運動」で(人の生や死も)、それは鉛筆が倒れるように終わる。
それを泣きも笑いもせずに純粋に抽出したところに、Pontusの力量を感じさせるし、本作のクールな魅力になっている。


まだ消化しきれてない部分もあるので、本作についてまた思いついたことがあれば書きたいと思います。