DVD - 世の中を面白くするのは変人様です 〜The Strongest of the Strange

h-shark2006-06-25

ついに話題のDVD、The Strongest of the Strangeが日本でも先日発売されました。
http://www.skateboarding.com/skate/stories/article/0,23271,1131204,00.html

ポンタス・アルヴ、スコット・ボーンといったアンビリーバーズ系のライダーが中心に滑っていますが、撮影、制作はポンタス・アルヴ自身によるもので、
映像の編集センスが素晴らしい。16ミリか32ミリのモノクロフィルムを多用しながら、スケートシーンのみならず様々な映像をコラージュして、今までのスケートビデオには無かった世界を見事作り上げていると思う。
かといってスケートシーンがおろそかになることはなく、ワイルドで独創的な滑りが連発する。アート視線で見ても、スケート視線で見ても絶対飽きさせない内容だ。


音楽も古いヨーロッパ風のジャズにソニックユーススペシャルズ、ニールヤング、レナード・コーエンなどのロック、それにフィールドレコーディング的な効果音が見事にブレンド
サウンド面で何といっても驚きなのが、スコット・ボーンのシーンだろう。彼はなんとブコウスキーの詩の朗読でスケートしている(こんなスケーター今までいただろうか?)。


僕はスコット・ボーンのことが前から気になっていたのだけど、滑りを見た事は無かった。今回ビデオで確認して、彼はストリートよりランプ系のライダーなのかな、と思った。ストリートのシーンもあるのだが、ランプ系の技術を応用したものが多いと思う。ただその応用の発想が「飛んでいて」、とんでもないジャンプがここにはいくつか含まれている。必見ですぜ。


あと、このビデオでちょっと感動的だったのは自分たちで作ったオリジナルスケートパークの歴史についての映像だ。廃墟になった工場の敷地に、スケーターたちが土方になって煉瓦やセメントを用意してランプを作り(台車はもちろんスケートボード)、ローカルズオンリーのパークが出来上がる。2年間そのパークは維持されるが、その間浮浪者やジャンキー達がそこに集まるようになる。スケーター達は一緒にキャンプファイヤーやバーベキューを楽しんでいる。彼らの間にはどちらも取り締まりの厳しい社会に対する「非」なり「反」なりの認識があり繋がりがあったように見える。社会のはみ出しもの達が集い、スケートトリックを見物しながら宴を繰り広げる様を、ポンタス・アルヴの奇妙でおかしみのある編集で収めたこのシーンは、道化たちの姿を愛情を持って映し出したフェリーニの映画をなんだか思い出してしまった。
最終的にはこのパークは政府の力で取り壊されることになる。ブルドーザーがランプを無惨に潰し、相当に気落ちするスケーター達。しかしスケーター達は場所を変えて、再び土方仕事に取りかかってパークを作り、それは今でも健在のようだ。全く前向きなアウトローである、スケーターという種族は!


そういうわけで、スケート文化だけに限定しておくにはもったいない、とても深みと内容のあるビデオでした。
今年のトランスワールドのベストビデオ賞は「BAKER 3」で、ストリートスケートのロックな反社会性を全面に打ち出した割と直球な作品で、僕はそれも好きなのだが、ワイルドな表現ばかりでもスケート文化に行き詰まりが起こるだろうから、こういう力強い変態的な作品がもっと評価されればスケート文化に多様性と可能性が広がってくるのではないだろうかと思う。
映画や音楽、小説が大好きだけどスケートには全く感心が無い、という文系コアなあの人やこの人に見せてあげたいなー、という作品です(そして板の世界にハマらせてやりたい・・・)。