明日へのチケット

h-shark2006-11-28

エルマンノ・オルミアッバス・キアロスタミケン・ローチ、3人の監督によるコラボレーション。
詳しい内容はこちら↓
http://www.cqn.co.jp/ticket/


オルミは時間を、キアロスタミは登場人物の視点を巧妙にずらしながら静かなテンションを生み出していく。シンプルで盛り上がりに欠けるような構成の話なのだが、徐々にその世界に引きずり込んでいく手法は流石だと思う。
それに比べると、キャラクターの色や会話の起伏、一見するとイージーとも思われる人種問題ネタで話を繰り広げていくローチは、荒い、とも取られかねない。


しかし、僕はローチが一番良かった(キアロスタミ目当てで行ったけど)。ローマまでサッカーを見に来たセルティックファンの3人組。彼らはスコットランドでスーパー勤めをしていて、ローマでセルティックの試合を見るために3人でお金を積み立てをしていた。のだが、チケットパクられたり、積立金を一人がイタリア製の革靴に使ってしまったり、ナンパに失敗したり、とアホ丸だしなのである。僕はアホの三人組という設定に弱いのだが(スパイナルタップとかハードロックハイジャックとかダチョウ倶楽部とか)、この作品はアホがいかに人種問題に対峙するかという、従来のThree Stooges映画ではあまり見られなかった凄く難しいテーマに挑んだ稀有な作品であり、またそれを爽やかに描く事に成功していると思う。


いや、アホ側の視点だけではなく、どの登場人物の描写もフレッシュで、そのことが少々無理があると思われる人種問題の扱いもクリアしてしまったのだろう。
間違いを恐れずに、下世話も芸術も飲み込んでアクチュアルな美しさを描いたローチの力量に感服。「麦の穂をゆらす風」も見てみたい。


キアロスタミ、ババアの描写はウマいよなー。個室でババアが声を張上げる不気味さ(カメラはババア視点)は一体何なんだろう。あれは面白かった。