ドストエフスキーの天使たち 高橋康雄


1989年発行。大和書房。最近古本屋にて購入。タイトルに惹かれて。
僕がドストエフスキーを読む時、着目するのは「笑い」「幼児性」「二重人格性」である。現在のところ。
しかしこれらの特性について論理的に説明できるほど読み込んではいないし、深く考えてみたことがない。
ただぼんやりと、気になっていて、本書を見つけた時は、自分の頭の中でもやもやとするドストエフスキーに関する思考に、そのうちの一つである「幼児性」について、すっきりとした道筋を示してくれるかもしれない、と期待して購入してみることにした。

一読した感想としては、自分には洞察が「浅い」ように感じられる。

ドストエフスキーの小説で「子供」が取り上げられている箇所を並べ、「どうです、子供について触れている文章がこんなに多いでしょ。そして実に印象的な描写じゃありませんか。」と、幼児性に関する全般的な紹介に終わっていると思う。

やはりドスが幼児性に拘ったのは何故なのかというところをもっと突っ込んでほしい。


ドスの作品から感じられる「笑い」「幼児性」「二重人格性」といった特性の根底にあるのは、コリン・ウィルソンがドス作品批評で果敢に掘り下げたように、「アウトサイダー」というテーマだと思う。ただ彼は「幼児性」に焦点を当ててドスを語ってはいなかった。


ここで自分の思考のもやもや感を少しあらわにしてみるが、彼の著書「アウトサイダー」にてドス批評の前置き的に、同じような資質の持ち主としてゴッホが登場している。そしてゴッホについていえば思い出すのが松本人志の発言で、彼はゴッホの絵について「すごく幼稚。しかし自分は幼稚ということに確信を持っている」というようなことを語っている。松本人志アウトサイダーと幼児性の関連性について多分直感的に気づいているのだろう。彼の表現である「笑い」の在り方を見るにつけ、その気づきは正解だと思っていた。


ドス作品における幼児性についてアウトサイダー的考察に関連づけて解説しているような本はないだろうか。とにかく本書は欲求不満の感。
「二重人格性」については文学界で山城むつみ氏が興味深い考察をしていることを発見。「笑い」についても探し中。
http://www.coara.or.jp/~dost/5-2-3-f.htm