何もかも憂鬱な夜に - 中村文則

h-shark2009-03-22

なぜ控訴しない?―施設で育った過去を持つ「僕」は、刑務官として、夫婦を刺殺した二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している―。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。
(上記はアマゾンの「内容(「BOOK」データベースより)」)


最近好きなお笑いコンビ、ピースの又吉君(http://matayoshi.laff.jp/)がおすすめしていたので買ったみた。情けないことに中村文則氏の作品はこれまでに一度も読んだことがなく、本作品が僕にとっての中村文則初体験となったわけだが、大変感銘を受けた。


上記の紹介文のように、とても暗いテーマがベースになっていて、軽い気分で読めるような作品ではない。というかこのタイトルは一体何なのだろう、とさえ思う。何もかも憂鬱な夜に、、、ある種開き直っているような感さえあるのでは、、、。


僕のこれまでの浅く狭い読書体験をもとに感想を述べさせてもらうと、ドストエフスキーの一連の作品、「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」などに通じる世界観を感じた。犯罪を扱っていることや、宗教性が帯びていることなど、ディテイルの点において似ているとも言えるのだが、それよりもどんどん落ちていくようなマイナスの重力が一気にプラスの浮力に転化するような快感があり、その感覚がドストエフスキーを彷彿させるような気がしたのである。それもちゃんと現代の人々に伝わる形できっちり作品化しているのが、素晴らしいというか凄いのではないかと思う。同時代でそういう作品に出会えるのは嬉しいことでもある。


まだ若い方なので、これからが非常に楽しみなのであるが、僕の場合先ず氏の過去作品を鑑賞しなければ。
(↓中村文則氏のウェブサイト)
http://www.nakamurafuminori.jp/


*ピースの又吉君の名前を出しましたが、ピースを良く存じ上げていなくてこのブログを読んだ方におせっかい的に申し上げておきますが、彼はコアな文学ファンですが、彼のコントや漫才が必ずしも「何もかも憂鬱な夜に」的な内容な訳ではありません。
そういう変な期待で彼の活動に接しられてはファンとしては不安だ、と思ったので。二つの事象があるとすれば、それは別々のこと、なのですから。