Frederick Wiseman --- BOXING GYM



神戸アートビレッジセンターで、何と監督のトークショーとセットで鑑賞してしまった。
映画については、ただただかっこいい映像の連続に痺れた。
監督自身も仰っていたが、この映画のテーマの一つに「制御された暴力」というものがある。
映画の中で、バージニア工科大学銃乱射事件について触れられる。監督が言うには「あれは無制御な暴力だ」と。
それに対して、ボクシングは人を殴り合う暴力的な行為であるが、それは制御されたものだ。
性別、人種、年齢を問わず色んな背景の人達がジムに通うが、このジムの中では「制御された暴力」を通して、みんな心の平穏を得ることができているのではないかと思った。
そう、現実社会の無制御さから制御された運動へと人々を導くトレーナーはまるでプリーストのような存在だった。
(そして、そのような映画を観るという行為を通して、ワイズマンがそれと同じような地点へと我々を導いているのは言うまでもない。)


登場人物は全て素人であるが、みんなの一つ一つの所作、動きが完成されていることに驚く。編集の力もあるが、プロの演技でもここまで洗練されたムーブメントを観ることはなかなか珍しいだろう。


映画を観ることの純粋な喜びが体験できたと思う。映画は本来今作のようにかっこいいものなのだ。


*追記
なかなか面白いインタビューがありました。
「ムーア監督の映画は、(取材対象者ではなく)ムーア監督自身についての映画だと思う。特に面白いとは思わないな」
http://www.cinematoday.jp/page/N0019655