リバースA 〜 演技したい女と演技させない男

ゴダール女と男のいる舗道」では、アンナ・カリーナがブラジャー姿になっている。このシーンに何か意味があるかというと、何の意味もないと思う。(一応、娼婦が客の前で脱ぐ、という設定ではあるが)
これはただの「ブラジャー姿のアンナ・カリーナ」だ。


ゴダールはこの映画で、演技していない彼女のカットをいくつも使い、相当彼女を怒らせたらしい。


一番演技らしい演技といえば、彼女が映画館で泣くシーンだろう。
(『裁かるゝジャンヌ』の、審問官「救済は?」 ジャンヌ「死」 
というシーンを見ているアンナカリーナが泣いている。これはアワーミュージックで再び引用される。)


多分、この演技らしい演技を撮った後は、やりたい放題だったのではないだろうか。つまり涙のシーンは「言質取ったで」というヤクザまがいの確約で、他は演技してない女優の姿を撮りまくっては編集しまくる。


そのやり取りは、まるでAVのような関係性も感じるし、上記のブラジャー姿はパンチラ写真程度の志のようなも気もするのだが、仕上がった映像は相当に美しい。どんな野蛮なことであれ、美しく撮れてしまうのがやっぱりこの監督の魅力。


それに、物語上「必要とされる」もったいぶったブラジャー姿より、ただのブラジャー姿のほうがカッコいい。