ガス・ヴァン・サント「パラノイドパーク」

カンヌ映画祭60周年記念賞を受賞したガスの最新作。今年日本で公開されると思いますが、個人的に今年最も期待している映画の一本です。



ストーリーの内容は、、、ポートランドで生活している16歳のスケートボーダーが主人公で、名前はアレックス。ある日、ポートランドにある有名なスケートパーク、バーンサイドパークに出かけた時、過って警備員を殺してしまう。その場を逃げ去ってしまったアレックスは、警察にも何も言わず、殺人を秘密にしようする。しかし、次第に自分の心の中で葛藤が生まれ・・・


というような内容らしいです。ドストエフスキー罪と罰」のスケーター版、とも評されているよう。
今までガスが何度も撮り続けてきた「若者の混乱した美しい顔」が、スケートボーディングを背景に再び映し出される傑作の予感がします。


クリストファー・ドイルが撮影を手がけていますが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%AB
カメラはスーパー8と35mmを使用したそうです。スーパー8を使用した理由について、ガス曰く「スケートボードに乗りながら大きいカメラで撮るのは難しい。多くのスケートフッテージで使用されているスーパー8を使うことにした。」とのことです。
(以下のサイトより引用http://www.emanuellevy.com/article.php?articleID=5810


今までのクリトファー・ドイルの手法として特徴的らしいのが’固定したフレーミング’で、一方にそれを活かした映像があり、またスケートボーディングの手法である’非固定世界の映像’がある。
様々なスタイルの映像手法がとられたようですが、そのような作品がカンヌ映画祭60周年記念賞を受賞したとは、僕としては感慨深いものがあります。
だってスケートのフィルミングを取り入れた作品が、映画の歴史を象徴する賞を獲得した、ということなのだから。これは映像史の中で重要な出来事の一つなのではないだろうか、とさえ思います。(つまりスケートボーダーが主人公であること云々ではなく、スケートボーディングによるカメラの歴史的革命が行われたことに感激しているのです。まぁ日々フッテージを撮り続けている人たちにとっては、既にその「革命」は行われていたのだろうけど。今回の場合は、大衆的な地点での、である。いやな言い方をすれば権威的な地点でもあるけど。)


さぁ、もっとコアにいきましょう。この映画の舞台でもあるスケートパークですが、紹介文でよく「’パラノイドパーク’に出かけたアレックスは・・・」という文章を目にしますが、これは実際は’バーンサイドパーク’なのではないだろうかと思います。ポートランドのスケートパークとして最初に名前があがるのが’バーンサイドパーク’だし、以前Youtubeで見かけた「監督自らがスケーターをスカウトする場所」の映像も、確かにバーンサイドだった。だから僕はあえて上記の紹介文中で’バーンサイドパーク’と書いたんですけど。。。


スケーターならご存知かと思いますが、バーンサイドパークは非常に興味深いパークです。バーンサイド橋の下にあった土地に、スケーター達が所有者に’無断で’スケートパークを’建設’しはじめたのがその始まりで、その後パークの存在が話題になり、各地からスケーターが集まるようになった。本来ならば「不法」な施設であるが、市民のパークに対する認知度の高まりによって、ポートランド市もこの施設の許可に同意するようになったらしい。


バーンサイドパークについては僕ももっと知りたいのですが、中々資料等目にかけることが難しい。その中で発見させていただいた以下のブログは大変分かりやすかったです。著者様リンクさせていただいてありがとうございます。
http://tenderpaw.blog4.fc2.com/blog-entry-5.html


以前から好きな監督だったガス・ヴァン・サント、そして最近ますますハマッているスケートカルチャー、個人的に興味のある二つのことが融合した作品なので、一種祭りごとのようでもあります。ポートランド出身で、少年好き(笑)のガス監督がどうしてスケート映画を撮らないんだろう?と腑に落ちない気分でしたが、遂に!という気持ちでいっぱいです。


===追記メモ===
http://video.aol.com/video-detail/paranoid-park-chris-doyle-qanda-on-skatepark-filming/1606144675
http://www.blakenelsonbooks.com/2007_11_01_archive.html